
電気主任技術者の外部委託とは?まず制度の全体像
高圧(600Vを超え7,000V以下)で電気を受けている工場・ビル・店舗のキュービクル(高圧受電設備を金属製の箱に収めたもの)は、電気事業法上の「自家用電気工作物」に当たります(電気事業法第38条第4項)。
自家用電気工作物を設置する事業者には、大きく2つの義務があります。
- 保安規程を定め、使用の開始前に届け出ること(電気事業法第42条第1項)。変更したときも遅滞なく届け出ます(同条第2項)。
- 電気主任技術者を選任すること。工事・維持・運用に関する保安の監督をさせるため、電気主任技術者免状の交付を受けている者のうちから選任しなければならない、と定められています(同法第43条第1項)。
いずれも罰則があり、主任技術者を選任しなかった場合は300万円以下の罰金(同法第118条第7号)、保安規程の届出をしなかった場合や虚偽の届出をした場合は30万円以下の罰金(同法第120条第1号)と規定されています。
とはいえ、店舗1棟のために有資格者を雇用するのは現実的ではありません。そこで電気事業法施行規則第52条第2項が、一定規模の自家用電気工作物について、要件を満たす者と保安管理業務の委託契約を結び、保安上支障がないものとして経済産業大臣(事業場が一つの産業保安監督部の管轄区域内のみにある場合は、その所在地を管轄する産業保安監督部長)の承認を受けた場合には、電気主任技術者を選任しないことができると定めています。これがいわゆる「保安管理業務外部委託承認制度」です。
| 比較項目 | 自社で選任する場合 | 外部委託する場合 |
|---|---|---|
| 根拠 | 電気事業法第43条第1項 | 電気事業法施行規則第52条第2項 |
| 必要なもの | 免状交付を受けた者の雇用または兼任等 | 要件を満たす受託者との委託契約+承認 |
| 手続き | 選任後、遅滞なく届出(法第43条第3項) | 保安管理業務外部委託承認申請(施行規則第53条第1項) |
| コスト構造 | 人件費として固定的に発生 | 月額の委託料+年次点検費用など |
| 変更のしやすさ | 採用・配置転換が必要 | 委託先の変更は可能(改めて承認申請が必要) |
| 向くケース | 大規模事業所、複数拠点を自社管理 | 単独の工場・ビル・店舗・施設など |
外部委託が認められる設備の要件(電圧・出力の上限)
施行規則第52条第2項は、対象となる自家用電気工作物を次のように限定しています。
- 出力5,000kW未満の太陽電池発電所または蓄電所であって、電圧7,000V以下で連系等をするもの(第1号)
- 出力2,000kW未満の水力・火力・風力発電所であって、電圧7,000V以下で連系等をするもの(第2号)
- 出力1,000kW未満のその他の発電所であって、電圧7,000V以下で連系等をするもの(第3号)
- 電圧7,000V以下で受電する需要設備(第4号)
- 電圧600V以下の配電線路(第5号)
工場・ビル・店舗のキュービクルは第4号に当たります。ここで大事なのは、需要設備については「7,000V以下で受電していること」が条件であり、設備容量そのものの上限は定められていないという点です。一般的な高圧受電は6,600Vですから、キュービクル受電であれば外部委託の対象になります。一方、20kVや66kVといった特別高圧で受電している設備は対象外です。
なお、非常用発電機や太陽光発電を併設している場合は、需要設備とは別に発電所としての区分も関わってきます。判断に迷うときは、単線結線図を手元に確認するのが近道です。
委託先(受託者)に求められる要件
誰にでも委託できるわけではありません。委託契約の相手方の要件は施行規則第52条の2に定められており、個人の場合(いわゆる「電気管理技術者」)と法人の場合(「電気保安法人」)に分かれます。個人の場合の要件は次のとおりです。
- 電気主任技術者免状の交付を受けていること(第1号イ)
- 告示で定める実務経験があること(同ロ)
- 告示で定める機械器具を有していること(同ハ)
- 担当する事業場の規模に応じて算定した値が、告示で定める値未満であること(同ニ)
- 保安管理業務の適確な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと(同ホ)
実務経験の年数は「電気事業法施行規則第五十二条の二第一号ロの要件等に関する告示」(平成15年経済産業省告示第249号)第1条で、第一種3年・第二種4年・第三種5年と定められています。免状交付後に保安管理業務に関する講習を修了していれば3年、講習と訓練の両方を修了していれば2年に短縮されます。さらに、設備容量300kVA以下・キュービクル式・主遮断装置がPF・S形(高圧限流ヒューズと高圧交流負荷開閉器の組み合わせ)という条件をすべて満たす需要設備のみを担当する場合は、これらの期間から1年を減じることができます(同条第2項)。
機械器具は同告示第2条で、絶縁抵抗計・電流計・電圧計・低圧検電器・高圧検電器・接地抵抗計などが挙げられています。
「33点」という業務量の上限
見落とされがちですが実務上とても重要なのが、上記の「算定した値」です。同告示第3条は、担当する事業場ごとに設備の種類・規模に応じた換算係数(たとえば高圧需要設備で設備容量150kVA以上350kVA未満なら0.8、1,000kVA以上1,300kVA未満なら1.6)を定め、その合計値が33未満であることを求めています(同条第4項)。
つまり、1人の技術者(法人の場合は保安業務担当者ごと)が引き受けられる件数には法令上の上限があります。「安いから何件でも受けられる」という世界ではない、ということです。
加えて、受託者の主たる連絡場所は事業場に遅滞なく到達し得る場所にあることが求められ(施行規則第53条第2項第6号)、内規「主任技術者制度の解釈及び運用」では、この「遅滞なく到達」を2時間以内に到達することと解釈しています。
承認の手続きと流れ
承認を受けようとする設置者は、様式第43の「保安管理業務外部委託承認申請書」に、①委託契約の相手方の執務に関する説明書、②委託契約書の写し、③相手方が要件に該当することを証する書類を添えて提出します(施行規則第53条第1項)。提出先は、事業場の所在地を管轄する産業保安監督部です。現在は経済産業省の電子申請システム「保安ネット」による申請が案内されており、利用にはgBizIDが必要です。
審査の基準は施行規則第53条第2項に列挙されており、条文は「次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、承認をしてはならない」という書き方になっています。したがって承認されるかどうかは、あくまで所轄の産業保安監督部の判断です。書類が整っていれば必ず通る、というものではない点はご理解ください。
実務上の流れは、①委託先の選定と契約内容の確定 → ②保安規程の作成・届出(既存設備なら変更届出)→ ③外部委託承認申請 → ④承認、という順序になります。委託先を別の会社に切り替える場合も、新しい契約にもとづいて改めて承認申請が必要です。また、要件を満たさなくなったときなどには承認が取り消されることがあります(同条第5項)。
外部委託の点検は何か月に1回必要か?頻度のルールと緩和の要件
点検の頻度は、施行規則第53条第2項第5号の委任を受けて、前述の告示第4条が具体的に定めています。需要設備に関する主な区分は次のとおりです。
| 設備の区分 | 点検頻度 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一般の高圧需要設備(下記に該当しないもの) | 毎月1回以上 | 告示第4条第10号 |
| 信頼性の高い設備条件をすべて満たし、設備容量100kVA以下のもの | 隔月1回以上 | 同第7号 |
| 上記の設備条件を満たし、低圧電路の絶縁監視装置または漏電遮断器があるもの | 隔月1回以上 | 同第8号イ |
| 上記に加え、第三者認証を受けた機器で遠隔から適確に点検できる措置をしたもの | 毎月1回以上(うち3か月に1回以上は現地) | 同第8号ロ/内規4.(7)② |
| 絶縁状態と負荷の監視装置があり、主遮断装置等が更新計画どおり更新されているもの | 3か月に1回以上 | 同第8号ハ |
| 信頼性の高い設備条件を満たす屋内キュービクル式で、蓄電池設備・非常用予備発電装置がないもの | 3か月に1回以上 | 同第9号 |
| 小規模高圧需要設備(設備容量64kVA未満・非常用予備発電装置なし) | 3か月に1回以上(登録点検業務受託法人が受託する場合は6か月に1回以上) | 同第6号 |
| 設置・改造等の工事期間中の需要設備 | 毎週1回以上 | 同第11号 |
| 年次点検(主として停電して行う点検) | 1年に1回以上 | 内規4.(7)③イ |
表中の「信頼性の高い設備条件」とは、告示第4条第7号イ〜ニに掲げる、①柱上に設置した高圧変圧器がない、②キュービクル内以外の高圧負荷開閉器に可燃性絶縁油を使っていない、③責任分界点またはこれに近い箇所に地絡保護継電器付高圧交流負荷開閉器(GR付PAS)または地絡遮断器がある、④責任分界点から主遮断装置の間に所定のもの以外の変成器がない、という4条件です。
近年の改正で追加されたのが、遠隔監視・遠隔点検を前提とした区分です。第8号ロは、第三者認証を取得したカメラなどの情報収集機器と通信機器を備えることで、月次点検を離れた場所から実施できるようにするもので、それでも3か月に1回以上は現地で点検する必要があります。第8号ハの「3か月に1回以上」は、絶縁と負荷の監視装置に加え、主遮断装置等の設備更新計画を保安規程に定め、そのとおりに更新していることが条件です。更新期限が来たのに更新しなければ要件から外れ、適法な頻度に戻したうえで改めて承認申請が必要になる、と経済産業省のQ&Aは明記しています。
年次点検については、信頼性が高く同等と認められる点検が1年に1回以上行われている機器に限り、停電させて行う点検を3年に1回以上とすることができる、という例外も置かれています。
なお、この告示は制度改正が繰り返されており、直近では令和7年3月31日経済産業省告示第43号(令和7年4月1日施行)による改正が入っています。頻度の緩和を検討する際は、必ず最新版で確認してください。
電気主任技術者の外部委託にはいくらかかるのか?見積書で見るべきポイント
外部委託の料金は法令で決まっているものではなく、事業者ごとの個別契約です。公表されている業者サイトの情報を横断して見ると、高圧需要設備の月額はおおむね次のような幅に収まります。
- 100kVA程度:月額9,000〜11,000円程度
- 200kVA程度:月額12,000〜17,000円程度(業者による差も大きい)
- 500kVA程度:月額20,000〜28,000円程度
金額そのものより注意したいのは内訳です。同じ「月額◯円」でも、年次点検(停電点検)の費用が月額に含まれているか、実施月に別途請求されるかで年間総額は大きく変わります。別建ての場合、月額の3倍前後を年次点検費として請求する例も紹介されています。見積もりを比較するときは、少なくとも次の点を揃えて確認してください。
- 月次点検の頻度と、現地・遠隔のどちらで行うか
- 年次点検(停電点検)が含まれるか、別途か。停電作業に伴う費用や高圧ケーブルの絶縁耐力試験の扱い
- 緊急時の出動・事故対応の費用が含まれるか
- 保安規程の作成や各種届出の代行が含まれるか
- 契約期間の縛りと、解約時の条件
でんきのかんりでは、設備の容量・構成・所在地を確認したうえで個別にお見積もりを作成しています。契約期間の縛りは設けておらず、いつでも解約いただけます。
「あと何年、任せられるか」という視点
すでに外部委託をしている事業者にとって、実務上の論点は「委託するかどうか」ではなく「どこに委託するか」です。そして意外と見落とされているのが、契約の継続性です。
電気保安の担い手は高齢化が進んでおり、個人の電気管理技術者の場合、担当者が引退すれば契約はそこで終わります。法人でも、実際に現場を回る保安業務担当者が特定の1人に偏っていれば事情は同じです。承認は委託契約を前提に出ているため、受託者側の事情で契約が終われば、設置者は新しい委託先を探し、改めて外部委託承認申請をやり直すことになります。設備の履歴を知っている人がいなくなる、という点でも影響は小さくありません。
これは誰かの落ち度ではなく、業界全体の構造的な課題です。だからこそ、委託先を選ぶときや見直すときには、料金と対応品質に加えて次の3点を確認しておくことをおすすめします。
- 現場を担当する技術者の体制:担当者は誰か、その人が不在のときに誰が代わりに動くのか
- 10年後も同じ体制で続けられるか:後任の育成や引き継ぎの考え方があるか
- 工事まで対応できるか:点検で不具合が見つかったとき、別の工事会社を探す手間が発生しないか
でんきのかんりは横浜市青葉区に本社を置き、関東全域で高圧・キュービクルの保安点検に特化しています(低圧設備はお受けしていません)。30〜50代の経験豊富なチームで、点検と電気工事の両方をワンストップで対応できる体制をとっています。長くお付き合いいただくことを前提に、体制そのものを設計しているつもりです。
まとめ
電気主任技術者の外部委託は、電気事業法施行規則第52条第2項にもとづく承認制度です。対象は7,000V以下で受電する需要設備などに限られ、委託先には免状・実務経験・機械器具・業務量(換算値33未満)・2時間以内の到達といった要件が課されています。点検頻度は告示第4条で区分ごとに定められ、絶縁監視装置や遠隔点検、設備更新計画を組み合わせることで隔月化・3か月化の道もありますが、いずれも保安規程や契約書の記載を含めた要件を満たすことが前提で、承認の可否は所轄の産業保安監督部の判断となります。
料金は個別契約のため、月額だけでなく年次点検や緊急対応を含めた年間総額で比較するのが確実です。そのうえで、「あと何年、同じ体制で任せられるか」という視点を一つ加えていただくと、見直しの判断がしやすくなります。
現在の委託内容が設備に見合っているか気になる方は、保安点検サービスのご案内をご覧いただくか、お電話(080-5528-4646/平日10:00-19:00)でお気軽にご相談ください。契約書と単線結線図をお手元にご用意いただければ、その場でおおよその見立てをお伝えできます。
よくある質問
Q. 電気主任技術者の外部委託にはいくらかかりますか?
A. 料金は法令で決まっておらず事業者ごとの個別契約ですが、公表情報を横断すると高圧需要設備の月額は100kVA程度で9,000〜11,000円程度、200kVA程度で12,000〜17,000円程度、500kVA程度で20,000〜28,000円程度が目安です。年次点検が別建てかどうかで年間総額は大きく変わります。
Q. 外部委託が認められるのはどんな設備ですか?
A. 電気事業法施行規則第52条第2項が対象を限定しており、需要設備は「電圧7,000V以下で受電するもの」が条件です。設備容量の上限はないため6,600Vのキュービクル受電なら対象になりますが、20kVや66kVの特別高圧受電は対象外です。
Q. 外部委託にすると点検は毎月必要ですか?
A. 一般の高圧需要設備は毎月1回以上が原則です。信頼性の高い設備条件や絶縁監視装置、第三者認証機器による遠隔点検、設備更新計画などの要件を満たすと、隔月や3か月に1回まで緩和できる区分があります。年次点検は1年に1回以上です。
Q. 外部委託の承認申請はどこに出すのですか?
A. 事業場の所在地を管轄する産業保安監督部に、様式第43の保安管理業務外部委託承認申請書と、委託契約書の写しなどの添付書類を提出します。現在は電子申請システム「保安ネット」での申請が案内されており、利用にはgBizIDが必要です。
参考にした資料
官公庁・業界団体
- 電気事業法(第38条・第42条・第43条・第118条・第120条)/電気事業法施行規則(第52条・第52条の2・第53条)
- 平成15年経済産業省告示第249号(実務経験・機械器具・換算係数33・点検頻度)
- 経済産業省「主任技術者制度の解釈及び運用(内規)」「主任技術者制度に関するQ&A」
- 関東東北産業保安監督部「外部委託承認制度」(保安ネット・gBizID)
料金相場
月額の目安は、民間事業者が公開している料金情報を複数突き合わせた参考値です(一次情報ではありません)。


