
キュービクルは「建物専用の小さな変電所」です
屋上や駐車場の隅に置かれている、クリーム色やグレーの金属の箱。前任者から「あれがキュービクル」とだけ引き継いだものの、中がどうなっているのかは見たことがない、という方は多いと思います。
キュービクルの正式な名前は「キュービクル式高圧受電設備」です。電力会社から届く6,600Vの電気を、照明やコンセント、空調で使える100Vや200Vに下げて建物に配る。その一式を金属の箱に収めたものがキュービクルです。
家庭や小さな店舗では、この「電圧を下げる」仕事を電柱の上の変圧器(電力会社の設備)がやってくれます。一方、ビルや工場、病院、スーパーのように電気をたくさん使う建物では、建物の持ち主が自前でこの設備を用意します。つまりキュービクルは、電力会社のものではなく自社の持ち物で、維持管理の責任も自社にあります。自分の建物が高圧か低圧かは別の記事でまとめています。
キュービクルの中に入っているもの
扉の中には、役割の違う機器がいくつも並んでいます。全部を覚える必要はありません。「電気を切る係」「電圧を下げる係」「異常を見張る係」「測る係」の4つに分けておくと、点検報告書や見積書が読みやすくなります。
| 機器(略称) | 役割 | たとえると |
|---|---|---|
| 断路器(DS) | 点検や工事のときに、回路を確実に切り離す | 作業用の元栓 |
| 遮断器(VCB)/負荷開閉器(LBS)とヒューズ | ショートなどの事故が起きたとき、大きな電流を止める | 高圧用のブレーカー |
| 変圧器(トランス) | 6,600Vを100V・200Vに下げる。キュービクルの主役 | 電圧の変換器 |
| 保護継電器(リレー) | 電流や電圧の異常を検知して、遮断器に「切れ」と指令を出す | 見張り役 |
| 進相コンデンサ(SC)と直列リアクトル | 電気の使い方の効率(力率)を整える。基本料金の割引にも関わる | 電気のムダを減らす装置 |
| 計器用変成器(VT・CT)と計器類 | 高い電圧・大きな電流を、計測できる大きさに変えて表示する | メーターとセンサー |
| 避雷器(LA) | 落雷による異常な高電圧を地面に逃がす | 雷よけ |
| 低圧配電盤(ブレーカー) | 下げたあとの電気を、フロアや設備ごとに分けて送り出す | 大型の分電盤 |
小さめの設備では負荷開閉器(LBS)とヒューズの組み合わせ、大きめの設備では遮断器(VCB)が使われるのが一般的です。どちらが入っているかは、点検報告書や単線結線図(設備の配線図)に書かれています。
箱の中でも「電力会社のもの」がある
キュービクルの中には、電気の使用量を量るためのメーター(電力量計)と、そのための変成器(VCT)も入っています。これは電気料金の計算に使う取引用の計器で、ここだけは電力会社側の持ち物です。交換の時期が来ると電力会社側から連絡があり、費用も原則として先方の負担になります。
箱の外にも関係する設備がある
キュービクルは単体で働いているわけではありません。電力会社の電線から敷地に電気を引き込む場所には、PAS(高圧気中開閉器)という機器が電柱の上などに付いています。ここが電力会社と自社の責任の境目です。そこからキュービクルまでは高圧ケーブルでつながっています。
PASと高圧ケーブルは箱の外にあるので忘れられがちですが、どちらも自社の設備で、古くなると停電事故の原因になります。「キュービクルの点検」と言うときは、通常この部分も含めて見ています。
担当者は扉を開けなくて大丈夫です
はじめに知っておいていただきたいのは、キュービクルの扉は担当者が開けるものではないということです。
高圧の電気は、直接さわらなくても、近づいただけで空気を飛び越えて感電することがあります。そのため扉には鍵がかかっています。中の確認は、電気主任技術者(外部に委託している場合は保安管理会社)に任せてください。
そのかわり、担当者だからこそ気づけることがあります。箱の外から見て分かる変化です。
- いつもと違う音がする(「ジー」という低い音は普段からしますが、バチバチ、パチパチという音は要注意です)
- 焦げたようなにおいがする
- 箱の表面や底のあたりに錆が広がっている、穴が開いている
- 扉がきちんと閉まっていない、鍵がかかっていない
- 箱の周りに物が置かれている、雑草やツタが伸びて箱に触れている
- 基礎のまわりに水がたまっている
- 鳥の巣や、ねずみ・ヘビなどが入り込んだ跡がある
こうした変化に気づいたら、次の点検を待たずに保安管理会社へ連絡してください。小動物が中に入り込んで起きる停電事故は、実際によくあります。
引き継いだら最初に確認しておきたいこと
キュービクルのある建物には、電気主任技術者を選任して定期的に点検を受ける義務があります。多くの事業所では外部の保安管理会社に委託しています。担当を引き継いだら、次の4つを手元にそろえておくと、何かあったときに慌てずに済みます。
- 保安管理の委託先と連絡先:夜間・休日の緊急連絡先も含めて
- 直近の点検報告書:「要注意」「交換をご検討ください」といった指摘が残っていないか
- 設置年と機器の製造年:キュービクル本体の銘板や点検報告書に書かれています
- 単線結線図:設備の配線図。見積もりや工事の相談で必ず求められます
設置から年数がたっている場合は、交換時期の考え方もあわせて見ておくと、点検報告書の指摘の意味がつかみやすくなります。
まとめ
- キュービクルは、6,600Vで受けた電気を100V・200Vに下げて建物に配る、自社所有の設備
- 中身は「電気を切る係」「電圧を下げる係」「異常を見張る係」「測る係」に分けると分かりやすい
- 取引用のメーターとその変成器だけは電力会社側の持ち物
- 箱の外にあるPASと高圧ケーブルも自社の設備で、点検の対象
- 扉は開けない。担当者の役目は、外から見える変化に気づいて早めに連絡すること
私たち株式会社でんきのかんり(本社:横浜市青葉区/関東全域対応)は、高圧・キュービクルに特化し、保安点検と電気工事の両方をワンストップで行っています。「引き継いだばかりで、うちの設備の状態が分からない」という段階でもかまいません。点検報告書をお手元にご相談ください(電話 080-5528-4646/平日10:00-19:00)。
よくある質問
Q. キュービクルの中には何が入っていますか?
A. 電圧を下げる変圧器を中心に、事故のときに電気を止める遮断器や負荷開閉器、異常を検知する保護継電器、力率を整える進相コンデンサ、計測用の機器、避雷器、低圧の配電盤などが入っています。
Q. キュービクルは電力会社のものですか?
A. 建物の持ち主(電気の契約者)の設備です。維持管理や更新の費用も自社の負担になります。ただし、電気料金を計算するためのメーターとその変成器は電力会社側の持ち物です。
Q. 担当者がキュービクルの扉を開けて中を確認してもよいですか?
A. 開けないでください。高圧の電気は近づいただけで感電するおそれがあります。中の確認は電気主任技術者や保安管理会社に任せ、担当者は外から見える異常(音、におい、錆、施錠、周囲の状態)に気づいたら連絡する、という役割分担が安全です。
Q. キュービクルから「ジー」という音がしています。故障ですか?
A. 変圧器は動いているあいだ低い音を出すので、一定の「ジー」「ブーン」という音は多くの場合正常です。音が急に大きくなった、バチバチという断続的な音がする、焦げたにおいがする、といった場合は早めに保安管理会社へ連絡してください。
参考にした資料
官公庁・業界団体
- 電気事業法(自家用電気工作物の保安、電気主任技術者の選任)
- 日本電機工業会(JEMA)「汎用高圧機器の更新推奨時期に関する調査」報告書(キュービクルを構成する機器の種類)
機器の構成について
キュービクル式高圧受電設備の規格(JIS C 4620)と、一般的な設備の構成をもとにしています。機器の種類や数は建物ごとに異なります。


